「自慢なので」

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もみじくんに連絡をし、小さくなるように受付の横で待っていれば、 「あ、こんにちは」 「杏さん、こんにちは」 え……。 スーツを着た会ったことのない人たちがなぜか私に挨拶をしてくる。どうしてでしょうか……?しかも名前まで。 「あれ、杏さん」 と、見知った人に名前を呼ばれた。前もここで会ったもみじくんの同期の柳下さん。 「あ、こんにちは」 「もう僕のこと覚えてくれました」 「もちろんです、この前は申し訳ございませんでした」 「いえいえ」 ぺこりと頭を下げれば、柔らかく微笑まれなんだか安心する。こんな場違いのところでひとりでいるのは落ち着かなくて内心声をかけてもらって、ほっとした。 「今日はどうしたんですか?」 「あ、あのもみじくんが資料を忘れてしまったようで届けにきました」 「あ、なるほどね」 納得したように頷いた柳下さん。けれどその後に「あ、」と何かを思い出したように呟いた。 「どうしたんですか?」 「いやー、杏さんこの会社で有名人なので」 「え、あの、柳下さんがくる前に何人かの方に名前を呼ばれて挨拶をされたのですが、」 恐る恐る聞いてみると「あぁ、やっぱり」という大して驚きのない返答。
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