囁く

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囁く

 森の中は鳥の声や葉の擦れる音。  日差しは真上から降り注ぎ、青い葉がそれをうけとめている。  目の前の白いワンピースをきたリリは時折木の枝に絡まる栗色の髪を触れるとこもなく、はらりと解ける。  シンプルなワンピースだと思っていたけれど、木漏れ日にきらめくことに気づいて目を凝らす。 (刺繍されていたのか)  繊細な模様の刺繍。  ツタのような花のような……不思議な模様が、襟元や裾や袖口を華やかにしていた。  すぐには気づかない、美しい刺繍。  白地に白い糸で模様をつけるのは、この辺りの風習なのかと、アーディは考える。  リリは歩きながら歌を歌う。少年とはとても思えない。  せっかく言葉が通じるようにしてくれたのに、その歌の時は異国の言葉で囀られていた。  高い音域も澄んだ声が響く。 (美しい歌なのに、なぜか悲しい)  もしかしたら悲しい歌なのかもしれないと、アーディは思う。 (あえて、言葉を通じなくしてるのかな) それほどに、その歌からほ悲しい何かがアーディの心へ流れ込んできた。    
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