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日が昇る
青い森の中に竜なんて存在しなかった。
とても広いとは言えない森の中。
端から端まで耳を澄ませて気配を探ったけれど、それらしいものは存在しなかった。
竜。
漠然とした伝説の生き物。
それでもアーディは、それを知っているような気がした。
リリが嘘を付いていると思いたくない。思いたくなくても現実は厳しかった。
日の出の気配を感じ、雨ごいの儀へアーディは向かう。
(なにか良くないことが起きている気がする)
**
予感は良くないものほど、当たるような気がする。
そんなことを考えても、現状は変わることなどなかった。
「これは、どういうことだ?」
アーディの口からそう零れた。
湖の淵に祭壇らしきものと、それらを仕切る者たち。
それから村人たちだろう。意外にも人数は多くない。
だけど、リリの姿だけ見えなかった。
(儀式にリリは必要なはず。なら、祭壇の近くにリリがいないのは変だ)
ゆっくり彼らに問う。
「リリはどこだ」
動揺する彼らの中で白い衣をまとう老いた男性が答える。
「雨ごいの儀は終わりました。リリは役目を果たしたのです」
人の命が消えたというのに、この人々の対応にアーディは心の中の何かが弾け飛んだ
アーディの冷たい目が彼らを見渡す。
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