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――嫌だ
――死にたくない、こんな苦しいまま、何もできないまま死にたくない
――美月
呼吸が整う兆しがなく、手足も痺れてきた。
テーブルにある薬の吸引器を掴み取ろうとして落としてしまう。
それをやっとの思いで手にすると誰かに取り上げられた。
優しい香りを立ち込ませ、天使の様に慈愛に満ちたヘーゼルの瞳が近付く。
美月だ。
「大丈夫だよ、今楽になるから」
やっぱり美月は僕を連れに来たんだな。
美月の声を聴いたら不思議と安心感が胸に広がった。
「これを飲んで」
月下美人の緑葉に乗せた何か燐光を放つ液体を美月が口にすると、唇に柔らかい感触があってすぐ喉から気管支へと清涼な空気が通った。
呼吸が一気に戻る。
――美月、君は
「美月……!」
気付けば掻き抱いていた。
「よかった……」
「見捨てたりしないよ」
僕の背中をぎゅっと抱きしめ返す。ここにいるよ、と言っているみたいに。
「耀がわたしにもう一度咲く夢をくれたから」
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