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熱い。熱い熱い熱い熱い。布団でさえ鬱陶しく感じ、掛け布団をベッドから蹴り落とす。ひゅー、ひゅー、と呼吸する。
体感温度は高熱を示しているのに、身体は全然言う事を聞いてくれない。
アレは夢。いつもならただの夢とすぐに脳味噌の片隅に追いやることなのに、一連の流れが頭に焼きついて離れない。
俺が見た澪華と名乗るソイツの顔は、どろどろに汚したあの女子高生そのものだった。
澪華であって澪華でないモノ。
夢の中で見た二種類の澪華はあの時、澪華を判別できなかったことへの報いってか。
一週間以上前の俺なら、迷いなく前者が澪華だと言えた。胸を張って、自信をもって言えた。
だが今の俺には分からなくなった。どっちが本物の澪華で、どっちが偽者なのか。
本物だと思えた澪華はもういない。一週間前まではちゃんといた。でも今はずっと前からいたという感覚さえ無い。
あの澪華も本物と述べられない気がしてならないし、だからと言って偽者だと思えた澪華はこの目で見てしまっている。
ならアレが本物なのでは。
いやでもアレは本物と言えるのか最早人間の形をしているだけの傀儡。
本物と述べる輩などこの世にいないし、そんな歪んだ価値観なんて持ち合わせていない。
なら偽者。でももう本物と呼べる澪華はいない。
いた筈なのに、今や顔の輪郭さえモヤのように霞んでる。じゃああの澪華も偽者。
本物の澪華は一体何。いやそもそも本物と偽者の差は一体どこに―――。
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