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「盾だァ……? 母さんを碌に守れやしなかったテメェがかァ……? 粋がってんじゃねぇぞクソアマがァ!!」
ぐく、とくぐもった声を漏らす。今にも破けてしまいそうなメイド服の襟元。もう飛び出した怨嗟は、俺の理性じゃ止める事ができない。
「テメェさ、流川の懐刀なんだろォ? だったらなんであのとき、盾にならなかった!! その流川にかかる火の粉を庇ってくれなかったんだ!!」
「そ……れは」
「どうせテメェにそんな能ねぇんだろ……? 守るだけの能が。それだけの力が……」
「私は……弥平さまに……」
「あぁ……? 何だテメェ他人のせいにすんのかァ。弥平の指示に従ったから守れなかった、そう言いてェのかァ……」
メイドの言い訳としか思えない反論に、俺の怒りは更に燃え上がる。ソイツを持ち上げたまま、俺は台所へ全力で投げ飛ばした。
背中を壁に強打し、ぐは、と声を上げた後、メイドは床に腹打ち。強打した所を摩りながらげほ、げほと咳き込む。
そんな姿に、俺はボコボコにしたチンピラを見下すときに向けてきたのと同じ目線を浴びせた。
なぁにが私は弥平さまに、だ。そんなモンが許されるんなら、テメェみてぇな側近とかいらねぇんだよ。ただ料理作る程度の無能の癖しやがって。
じゃあさ、なんで俺んトコに来たの。なんで水守家側近とかやってんの。なんで生きてんの。
本家派側近の癖に、何も守れてねぇじゃん。
``凍刹``とかいう大層な二つ名が聞いて呆れるわ。もっとできる奴だと思ってたのに、期待ハズレもいいトコだ。
痛がるメイドに向かって、俺は一切同情せず、尚も怒号を轟かせた。それはブーメランでもあり、そして事実でもある、最悪の暴言。
「そういうのをなァ……大した能のねぇ口先だけの凡愚って言うんだ!! 自分を弁える事すらロクにできねぇ奴が、出しゃばってんじゃねぇよ弱ぇ癖に!!」
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