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トイレの扉を貫通し、部屋中に響き渡るほどの怒号。
その声は非常に端麗であった。美男子を想像させながらも、晩年の男にありそうな渋さを感じさせる声音。
聞けば、誰もが渋さ溢れるイケてるおじさんだと認識するかもしれない。
声音だけならば。
「ふぅ。出たぜ出たぜ、さて」
どことなく渋さを感じさせる美声の主は排泄が終わったのか、便座の擦れる音が鳴る。
だがトイレの扉に立つ二匹は、並々ならぬ違和感に呆然とし、眉を潜め合う。
排泄を終え、トイレから身を起こす音までは聞き取ったが、いつまで経っても絶対に聞こえる筈の音が一つ足りない。
全ての汚物を一挙にして消滅させる最大にして最後の切り札であり、下水管のみが行使できる水属性最強魔法の詠唱音が。
「おい早く流せよ」
「うるせぇなマジで今ウンコ占いしてんだから少し静かにしろ」
「またか!? おまえそれやらねぇと死ぬのか!?」
「オメェ舐めんなよ、俺のウンコ占いは八割の確率で当たるって評判なんだぞ!!」
「それ皮肉だろ!! 二割外すのかよって意味の皮肉だろ絶対!!」
「八割当たるだけでも儲けもんだろうが!! 最近は目当てのもん引くのに確率なんざ1パー割るんだぞ!!」
「それどこの確率!? ぜってぇ新しく始めたゲームの確率だろそれ!!」
「少なくとも元旦のおみくじより大吉率高けぇのは確かだ!! つまり俺のウンコは神託をも超える!!」
「凄い事言ってるみたいだけど全部クソで台無しになってるから!! 最後は何もかも下水に流される儚い運命だから!!」
「むおおおおおお!! ボクのち○こおおおおおおおああああ!!」
「「うるせえ!!」」
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