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股間を手で押さえつけ、トイレの扉の前でうさぎ跳びを繰り返す中年男姿の妖精に、シンクロナイズした怒号が貫く。
既に妖精の顔は真っ青になっているが、尿意と戦う妖精など蚊帳の外。
トイレの扉で隔てられた中で行われるクソみたいな会話、略して糞話はまだまだ続く。
「うおお!? こりゃあすげぇ!!」
「あ?」
「バナナウンコとバナナウンコがクロスして、その接点にバナナウンコの切っ先が接してやがる!!」
「だから何だ」
「当たりも当たり!! 大当たりだぜぇ!!」
渋さ漂う美声の主の咆哮が唸り、全身黄緑色の蛙でありながらたった二本の足で立っている生物は、首を傾げる。
「つまりどういう事だよ。ただ単に糞の上に糞が載ってるのを見て喜ぶクソがいるって事しかわかんねぇぞ」
「だーから、新しい出会いがあるって事!! それも超面白ぇ奴等とのな!!」
「なるほど、全く分かんねぇ」
「あ。でも水難の相もあるわ」
「水難の相?」
隣でうさぎ跳びをしていた妖精から、突如全ての表情が消える。何らかの悟りを開いた菩薩の如き朗らかな笑みで、天井を見上げた。
「もうぉ……だめぇ……アッ……」
床にびしゃびしゃと垂れる音が響く。
窓から照らされる朝日が、股間から滲み出る湧き水と、床を濡らす水溜りを煌々と輝かせる。
半人半蛙の生物は、あー、と彼の哀れな姿を一瞥し、個室の中にいる美声の主に話しかけた。
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