突然のアサイメント

2/13
前へ
/95ページ
次へ
高橋理紗、この時十八歳。彼女は小さい頃から神童と呼ばれていた。 日本では二〇二〇年から単位さえ取得できれば中学、高校、大学と各学年のスキップ可能となっていた。 このシステムを使って、彼女は中学二年で東京大学卒業の単位を取得し、その後MIT(マサチューセッツ工科大学)に留学した。そしてMITの宇宙工学博士号を十六歳で取得したのだ。 これはもちろん日本初、世界でも十番目の速さだった。 その後、十七歳で相模原にある日本宇宙大学の研究所に入って、今は、この研究所で核パルス推進の研究開発を行っていた。 「倫太郎、おはよう」 その日、理紗が研究所に出社すると、既に川上倫太郎はオフィスに来てコーヒーを飲んでいた。 倫太郎は二十一歳。理紗が抜くまで彼が日本人のMIT博士号取得のレコードを持っていた。 今は、理紗の同僚兼彼氏という立場だった。 「おう、おはよう理紗。今日は早いな・・」 理紗の欠点の一つは朝の寝起きの悪さだ。それを倫太郎に指摘され、彼女は少しムッとしながら答える。 「私だって研究の節目の日には、ちゃんと起きれるんだからね!」 倫太郎は笑いながら・・ 「じゃあ早速、実験の手順の確認をするか・・」 今日は理紗の開発している核パルス推進のテスト機による最初の推進実験の日だった。 このテスト機は、静止軌道上の日本宇宙大学の軌道研究工場で自動ロボットによって組み立てられ、既に軌道上のテストエリアで準備を整えていた。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加