種子島へ そしてリフトオフ

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種子島へ そしてリフトオフ

理紗の操縦するJEJは高度三万フィートで水平飛行に入った。 航空路は二〇二五年より全RNAV(GPSを使用した広域航法)に移行し、地上航法設備(VOR/DME)は既に廃止されていた。この為、GPS衛星が失陥している現状では、レーザジャイロを使った慣性航法装置に頼って種子島へ飛行するしかなかった。 それは航法精度は高いとは言えないが、日本国内の航路なので問題なく種子島へのフライトが可能であった。 約十五分で房総半島を超えて、前方に伊豆大島が見えてきた。 そして、その右手、遠くに湘南の海岸が見通る場所で、もの凄い水煙が上がっているのが見える。 「あれが・・」理紗が右手を見て呟くと加奈が頷いた。 「そう、マイクロウェーブが海を蒸発させている場所・・」 この位置からだと、あと少しで湘南海岸に到達してしまう様に見える。 「あれを、私が止めるんだ・・」 理紗はもう一度呟いていた。 彼女のフライトは順調だった。現在、一般航空機の飛行は禁止されているので、種子島へのフライトは、通常のRNAV航空路を無視して最短コースで飛んでいる。 JEJは太平洋上を紀伊半島の先端を(かす)めた。そして室戸岬を右手に見て、種子島までは約二時間弱の飛行だった。
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