種子島へ そしてリフトオフ

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種子島は空港にもコスモポート種子島の愛称を持っている様に、日本で唯一の宇宙港だ。 その中心となる種子島宇宙センターは種子島の南の端に位置しており、打ち上げ方向の南東側がほぼ海に面したロケーションとなっている。 加奈と理紗が空港のロビーを出ると外に安曇重工の社有車が待っていた。 種子島宇宙センターまでは約四十分の道のりだった。 宇宙センターに到着すると、二人は三年前に新設された安曇重工の宇宙事業センターの建物に案内された。 ここにはH3ロケットの開発や組立を行う施設があり、今回は、この中に新コウノトリの予備機を持ち込み、理紗の為に訓練環境を整えてくれているとの事だった。 建物の中に入ると、そこにはH3ロケットの組立中の部品やSRB(固体燃料ブースター)が置かれている広大な工場だった。その片隅に新コウノトリの予備機が置かれ、その周りを数名の男性が取り囲んでいた。 加奈と理紗が近づくと、その人混みの中から一人の男性がこちらに気付き手を止めて近づいて来た。 「狩野くん!」加奈が呼びかける。 「理紗さん。彼が新コウノトリのプロジェクトリーダ 安曇重工技術部の狩野君よ」 加奈がそう説明してくれた。 狩野が右手を差し出す。 理紗がその右手を握りしめた。 「君が高橋君か。すごいな。本当に若いんだ。僕は狩野忠。新コウノトリの開発リーダだ。宜しく」 理紗が微笑みながら応える。
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