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「雲底が千メートルになっていますので、着陸直前まで滑走路が見えません。風速も問題です。現在三四Rに対して横風成分は三十ノットです。ホープ2の横風制限値は二十五ノットなので、三十四Rへの着陸は難しいと考えます。使用滑走路は二三にするしかないと思います。更に最大の問題は、着陸直前までホープ2との通信は出来ませんから、最新の状況を高橋君に伝えることができません」
長谷川は首を振った。
「それでは理紗君は三四Rへの着陸を横風制限を超えて達成しなければいけないのか? 何か理紗君と通信する手段は無いのか?」
その時、長谷川の横に座っていた倫太郎が声を上げた。
「ホープ2は太平洋上で減速旋回を行って高度と速度を大きく落とす予定ですよね。その空域に戦闘機を飛ばし、近傍から通信を試みたらどうでしょう? 超音速機ならその後の飛行コースのエスコートも出来ると思います」
長谷川は頷いた。(さすがの頭脳だな・・)
「分かった。それで行こう。防衛大臣に繋いでくれ・・」
長谷川は防衛大臣との話を終えると、竹本を振り返った。
「これで何とかなるか?」
竹本が言った。
「もう一つ。滑走路三四Rは三千五百メートルありますが、滑走路二三は二五百メートルしかなく、その先は海です。仮にホープ2の減速が上手くいかなかった時の為に、滑走路逸脱防止ネットを準備しておきます」
「分かったありがとう。それじゃ川上倫太郎君。一緒に羽田に向おう」
「はいっ」と言って倫太郎は、長谷川に続いて席を立った。
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