突然のアサイメント

1/13
前へ
/95ページ
次へ

突然のアサイメント

「五、四、三、メインエンジンスタート」 理紗の身体に物凄い振動が伝わる。 「一、〇、リフトオフ」 その瞬間、理紗の背中が一気にシートに押し付けられた。 H3-24Lが発射台を離れ、真っ青な空を宇宙に向かって加速していった。 二〇三〇年、宇宙開発は急激に進んでいた。 特に、宇宙は新しいエネルギーの供給源として大きな注目を浴びていたのだ。 静止衛星軌道には5つの巨大な太陽光発電プラントが打ち上げられ、その発電した電力をマイクロウェーブで地球に送っていた。その発電量は既に地球で必要な総電力の十八パーセントに達していた。 また二〇二八年より木星の水素プラント開発が始まり、二〇三二年には稼働する予定だった。 しかし二〇二〇年から連続して宇宙開発での深刻な事故が発生し、最終的に二〇二三年の大事故により三十八名の人命が失われた時、人類は宇宙へ人間を送る試みの無謀さに気づき、無人ロケットと自動ロボットによる宇宙開発が拡大していった。 そして、AIとロボット技術の進化により全ての宇宙作業を自動機が置き換える事が出来る様になった時、二〇二五年に有人飛行は完全廃止された。 二〇二五年以降、宇宙には誰も行っていない。 そういう時代だった。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加