絶望の霧

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「おお、今日はいっぱいいるな。よーしはりきって釣るぞ!」と活き込んで大きく釣竿を振りまわした後、川に糸を投げ入れた。  しばらくして、針に魚がつついてるときに妙な臭いがした。 「なんだ、この臭い……。」と疑問を口にしてから右手で鼻を擦って思わず視線をずらして見たら、さっきまで針をつついていた魚がいなくなってるのを気づいた。  まさかと心の中で呟いたら咄嗟に、イサエルは川の中に潜った。流れに逆らいながら岩肌を掴んで何かが収まるのを待った。 その瞬間、彼がいた辺りに赤黒い霧みたいなものが溢れかえった。 それに触れた木々達はみるみるうちに枯れていった。 (これは毒?) そう思っていてもあの霧は消えなかった。  やがて、岩肌に掴む力と息が耐えきれなくなっていた。 (くそ…俺はここで死ぬのか……?) そう思えて次第に諦めの心が覆っていき、瞼も自然に閉じて、岩肌を掴んでいる手も放してしまい川の流れに身を委ねてしまった。
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