第二章 噂の美人教授。

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第二章 噂の美人教授。

 大学生活が、始まった。  他の大学では、どうだか分からないが、ナンタイでは、一回生は前期、後期の二期生で、一般教養の授業を受ける。  各専門分野の、講義を受講出来るのは、二回生になってからであった。  一般教養は此の大学の、講師が受け持つ。  専門学科の教授の、講義を一回生は受講出来ない。  つまり、多くの一回生は、此の大学の教授の顔をほとんど知らないのである。  其の中で、此の大学の者なら、誰でも、知らない者がいない程の、名物教授がいた。  特に男子学生は、興味津々であった。  人間行動学既知感覚研究学部教授、下野毛章子。42歳。バツイチ。  普通ならアラフォーだと、同年代の男性とか、歳上好みのオバセン男とか、見栄張りなマザコン野郎しか、近寄って来ない。  しかし、下野毛章子の場合、あらゆる層の男性、いや、女性にも人気があった。 其の容姿、絶対にアラフォーには、見えない。  美人を通り越して、佳人、麗人の域。  人当たりが良く、明るい性格。  そして、天然な処もあって、其処が人間味を醸している。  同じ大学の教授連も、何時もソワソワしている。用もないのに、彼女の研究室の前を、良い歳こいた教授どもが、いったり来たり。  見かねた学長様が、彼女の研究室を重要研究棟一階の奥に移して、用の無い者が入って来られ無いようにした。  その上彼女は、研究熱心なので、中々研究室から出てこない。  彼女が研究室から出てくるのは、週三回の講義の時か、自宅に帰るとき。  いつ頃からか、彼女の研究室が、天岩戸と呼ばれるようになっていた。  其れなのに、大学には知らない者が居ない。実は10年から、彼女にはファンクラブが発足していた。  10年前、彼女が準教授として、此の大学に呼ばれたときと同時に、ファンクラブが発足して、代々学生達に受け継がれていた。  其の下野毛章子が、どういうわけか、フラりと柔道場に現れた。  五月晴れの、結構日差しの強い午後であった。
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