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夏魎は、人の魂を食らうと消滅するモノなのだが、稀に食い足りず、その場をさまよう事もある。まあ、たいした力の無い小動物みたいなものだから、脅威では無いのだが。
足元を気にしながら下に降りる。
奥の部屋から気配を感じた。
硝子戸を開けると、それは居た。
大きさは冷蔵しかできない小型の冷蔵庫くらい。
黒い毛に覆われた大きな一つ目。球体を少し伸ばしたような形状で、手足も翼も無く、宙に浮いて、大きな口を開けている。
ここまで成長するのか。
今までは大玉スイカかサッカーボールくらいがせいぜいだったのに。あながち、酷暑の影響と言う事も無いとは言い切れない。
だが、大きさは問題ない。
すし屋の湯呑くらいの小さなこの壺に詰め込めばいい。
壺を床に置いて、黒祝詞を唱える。少し舌を噛みそうになったが、問題ない。おとなしく萎んで、壺に吸い込まれていった。
とりあえず、夏魎は回収した。
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