夏魎の巣穴(カリョノスアナ)

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「プゥィンプォ~ン」  日が落ちる時間帯なのに暑さが変わらない。チャイムの音も変わらない。 「ガチャガチャ、ガチャッ、ガチャガチャ……キッギィィィ」  チェーンロックの難易度が上がったのか、それとも自治会長の爺さんの容態が進行したのか、たぶん後者と思うが、なかなかモタモタしている。 「あっ、ああ、君か、今日だったね……いや……終わったのかい?」  「はい、滞りなく」  向かい入れられて、生ぬるい麦茶をだされ、簡単に作業報告を終えた。  終始虚ろな感じで聞いているのかいないのか分からない。ほんの数時間前までと、また印象が違う。  仕事としては、ここで終了。 「ところで、伊能正孝、と言う人をご存知ですか?」 「うぅん? 知り合いにイノウという人は居ると思うが」 「そうですか」 「その人が、なにか?」  まったく覚えていないらしい。
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