夏魎の巣穴(カリョノスアナ)

15/16

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「俺が呪詛で狂わせた」  怒りなのか怯えなのか、小刻みに震えて涙と鼻水を大量に流している。俺の小さい頃寄りカッコ悪い。言葉も出ずに、荒い呼吸を繰り返している。  ジジイの健忘的な症状は、死んだババアを媒体に呪詛った結果。  肺をやられているのは、副産物のストレス過剰で、タバコを過剰摂取するようになったからだろう。体力も削がれて、進行が早まっているようだ。  まだ、自我があるうちに、告げられて良かった。  麦茶を一口含む。  まだほとんど残る、マズイ麦茶のコップをカタンとテーブルに置いた。 「それでは、失礼いたします」 「あ、ああ、ご苦労様、また何かあれば……」  茫然としながらも、老人は玄関まで送ってくれた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加