夏魎の巣穴(カリョノスアナ)

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「また、出たようだ、あのぉなんだったか、妖怪だかなんだか」 「夏魎(かりょ)ですね」 「それだ、そのカリョのせいか、先々月から十件、若い人が犠牲になった。その前にも何軒か、それの仕業らしい事件があった」 「まあ、全てが夏魎のせい、とは思えませんが、時期からしてその可能性は高いでしょうね。今年の異常気象で、奴らの行動も異常なのかもしれません」 「確かに、気温の高い年には、被害が大きいような気がするな」 「ええ、去年は最終的に七件でしたからね。奴らは夏の魔物なので、それまで眠っていて暑くなると出てきます。中身の腐った人間が大好物なんですが、こう暑いと皆腐ってますからね。だから今年は特に多く繁殖しているのかも、知れませんね」  声のトーンを落とし気味で、現状を説いてみたが、聞いているのかいないのか。特にそれ以上会話も無く、目線も合わせず。時々、気が抜けたような雰囲気がある。  思い出したかのように、パックの麦茶をグラスに注いで、テーブルに置いた。 「どうぞ」 「ありがとうございます」
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