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星の無い夜
辺りが寝静まった夜の内。
俺は家を抜け出すと、近くの展望台へと望遠鏡を担ぎ込むんだ。
注意深く付近に誰もいないこと確認し、三脚を組み立て夜空に向けてレンズを突きつける。
だが、そこからの景色は消して美しいと言えるものではない。
空に広がるのは満天の漆黒。
星も月もまるでどこかへ行ってしまったように地上から姿を消している。
「今日もダメか・・・」
俺は落胆して肩を落とした。
もちろん昔はこうではなかった。
田んぼと牧場しかないような片田舎でも、雲一つない空に浮かび上がる無数の星がこの展望台に降り注ぎ、常に観光客でいっぱいだった。
しかも、この時期であれば星々は右へ左へと流れる流れ星ともなれば、それはもう絶景で、この村では「空を見ていたら勝手に夜が明けていた」なんて冗談があいさつ代わりになるほど。
しかし、今となっては昔の話だ。
まばゆいばかりの星の光は黒い遮蔽物に遮られ、その代わりといった具合に村には昼夜を問わず光が灯り、大人達は朝から晩までそこで作業を強いられる。
今より10年前、大きな本当に大きな宇宙船が現れた。
あまりの出来事に唖然とする我々に対して、彼らは一方的にあるものを要求してきた。
それはこの星の資源でも食糧でもなく、労働力だった。
身の回りの世話から、衣食住にかかわるすべてを自分たちではなく我々にやらせようというのだ。
そこから我々にとっての地獄が始まった。
宇宙船に強制的に収容されるものや、星にとどまり彼らの仕事を従事させられるものなど様々だが、総じて異常なまでの労働を強いられた。
中には抵抗を示すものもいたが、星一つ覆うほどの宇宙船を作り上げる存在にかなうはずもない。
或る者は殺され、またある者は拷問に処された。
奴隷には自由も慈悲も無いのだ。
以来、空には常に巨大な宇宙船が停滞し、月はおろか太陽すら数えるほどしか拝むことが許されていない。
それでも、俺はまだ諦めていない。
いつか必ず、再びこの空に月を星を取り戻して見せる。
俺は黒い空を睨みつけた。
「人類!お前らの好きにはさせねぇぞ!」
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