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「そうですか。それは残念です。でも、取引先をお選びになるのはお客様の権利ですから。」
「謝る気はないのか?!」
「何に対してでしょうか?もし、事実を争われるつもりなら、相応のご覚悟でお願いします。私の態度をおっしゃるなら、すでに先程お詫び申し上げております。」
貴志は表情もほとんど変えず、淡々と伝える。
「あの…柿沼様、とおっしゃいました?」
そこで、今まで黙っていた成嶋が口をはさむ。
「この辺で引かれた方がいいですよ。オレはしがない講師ですけどね、この人、本気ですから。」
柿沼は黙り込んだ。
「さっきもこの人が言った通り、銀行ってあちこちに防犯カメラがあります。でもここはないんですよ。ここに連れてきたのは言わばオレの温情でもあって、ここで話を終わらせた方がいいんじゃないですか?」
オレ達、詫びろとか言ってないですよね。と成嶋が穏やかに言う。
「ここで引くのがベストじゃないですか?まあ、ご判断はおまかせしますよ。でも、オレは正直、柿沼様が取引を引き上げるより、こいつの親族とか彼女の親族怒らせた方が怖いって銀行も分かってると思いますよ。」
「所詮、銀行の次長如きが。失礼する。」
柿沼は立ち上がって出て行った。
「…だって。ごとき、ってさ。そいつ何もん?」
「アパート経営者。」
「あらら、アパロン先か。融資してんの?」
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