9.殺さないよ。ただ、死にたいと思うくらいの目に合わせるだけ

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アパロンはアパートローンだ。 融資先は大事な取引先なのは充分承知だ。 土地持ちであることも多いため、銀行にとっては大事な客先とも言える。 もちろんだから今回も声をかけられたのだと思うが。 品性がないことこの上ないな。 「融資してますね。でも、あの年齢でアパート経営って結局、無職と一緒だと思いますけどね。」 なんだって、相続セミナーなんかに来ているのかと貴志は吐き捨てるように言う。 「自分の相続ではないのかもな。」 「あらかた、死にそうな親族がいるんじゃないですか?あういう手合いは誰か死ぬとなると、ハイエナみたいに食いつくそうとしますから。」 「お前、言うことが辛辣だね。」 まあ、とりあえず引いたって、思っていいんじゃない?と成嶋がケロッとして言った。 「そうかも知れませんね。」 それより、だ。 「僕の、親族?」 「あ、そこ、突っ込んじゃう?」 てへへ、と成嶋は笑っている。 「そぉ。ちょっと前に用事があって、本社ビルに行ったらさ、お兄様が外出から帰ってきたところで。オレ、つい頭下げちゃって。そしたら君、誰だったっけ?ってわざわざ来てくれたんだよ。いやー、いい人だよねー。」 こいつは…。 「確信犯じゃないでしょうね…?」 「ち、違うって!ホントに!つい…。あ、お前のにーちゃんだーと思って...。ホント、つい…。」 にーちゃんだーって、学生か?!     
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