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アパロンはアパートローンだ。
融資先は大事な取引先なのは充分承知だ。
土地持ちであることも多いため、銀行にとっては大事な客先とも言える。
もちろんだから今回も声をかけられたのだと思うが。
品性がないことこの上ないな。
「融資してますね。でも、あの年齢でアパート経営って結局、無職と一緒だと思いますけどね。」
なんだって、相続セミナーなんかに来ているのかと貴志は吐き捨てるように言う。
「自分の相続ではないのかもな。」
「あらかた、死にそうな親族がいるんじゃないですか?あういう手合いは誰か死ぬとなると、ハイエナみたいに食いつくそうとしますから。」
「お前、言うことが辛辣だね。」
まあ、とりあえず引いたって、思っていいんじゃない?と成嶋がケロッとして言った。
「そうかも知れませんね。」
それより、だ。
「僕の、親族?」
「あ、そこ、突っ込んじゃう?」
てへへ、と成嶋は笑っている。
「そぉ。ちょっと前に用事があって、本社ビルに行ったらさ、お兄様が外出から帰ってきたところで。オレ、つい頭下げちゃって。そしたら君、誰だったっけ?ってわざわざ来てくれたんだよ。いやー、いい人だよねー。」
こいつは…。
「確信犯じゃないでしょうね…?」
「ち、違うって!ホントに!つい…。あ、お前のにーちゃんだーと思って...。ホント、つい…。」
にーちゃんだーって、学生か?!
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