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「どうして、兄と分かったんですか。」
「経済誌で見た事あったし。で、銀行で一緒に働いててー、今も仲間だっつったら、時間くれたんだよ。30分も。お前、お兄様に愛されてんなぁ…」
美味しいコーヒーご馳走になっちゃった、とへらへら笑っている。
いい話があれば持ってきてくれたらいつでも聞くよって、連絡先交換しちゃったとか言っているし。
貴志は頭が痛くなる。
兄と成嶋のコンビ…最悪だ。
今日の出来事の中で、一番ショッキングだったかもしれない。
8歳年上の兄は今は家業を手伝い、父の会社で役員として仕事をしている。
年が離れていることもあり、可愛がられていることは確かだ。
父は経団連にも顔が効く立場だし、兄もだ。
成嶋が言う本社ビルとは、榊原トラストの本社ビルのことだろう。
榊原家はビル経営が本職で今や他にもグループで多角経営している、地元の経営者一族である。
「兄が知ったら、ブチ切れます。」
「だろーなぁ…」
「はっきり言って面倒な客先なんかより、兄のがはるかにめんどくさいですからね。」
「分かるなー。30分のうち20分は弟への愛を熱く語られた。」
成嶋はあははーと笑っているが、兄さん…頼む。
同僚に兄弟愛を熱く語るのはホントやめてほしい。
もはや、なにも言うまい...。
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