10.人生は取捨選択

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10.人生は取捨選択

本社ビルに来るのは久々だ。 本社ビルと呼ばれているそこには、榊原トラストの本社が入っていた。 兄と話そうと思い時間をもらった貴志だ。 貴志は迷わず、エレベーターで役員室のある階のボタンを押した。 CEO、最高経営責任者、まさに兄の貴広がそうだ。 軽くノックをして、貴広の仕事部屋に入る。 貴広はちょうど電話をしているところだったが、貴志を認めると、目で挨拶してきた。 「構わない。そのまま進めてくれ。判断出来ない奴に用はない。いつまでも待つと思ったら大間違いだ。」 笑顔で話しているが… 相変わらず内容がエグい。 最高経営責任者としての兄はカリスマ性があり、仕事については厳しいところもある。 自他共に認める有能な人だ。 電話なので相手に顔は見えないはずではあるが、もし見えていたら、貴広のスタイルの良さや顔立ち、雰囲気に騙されるのは間違いないと貴志は確信している。 皆、この顔とソフトな人当たりに騙されている。 「じゃあ、よろしく。」 と電話を切った。 「貴志!待ってたんだ。」 先程までも笑顔ではあったが、今度は本当の笑顔だ。 「隣のタワーの個室が用意してあるから、行こう。」     
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