10.人生は取捨選択

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お互い忙しすぎて、会う時間はほとんど取れない。 それでも今回こうして時間を作ったのは、報告があるからだ。 お食事はどうされますか?と支配人がメニューを持ってきたが、貴広はいいよ、全部、任せる、と笑顔を向けた。 「先日、成嶋くんに会ったよ。」 「聞きました。」 「彼、面白いね。」 やっぱり…兄と気が合うような気はしたんだ。 「お前の近況も聞かせてくれた。すごくお前のことを褒めていたよ。兄として嬉しかった。」 「成嶋さんが、ですか?」 「うん。お前が出たあと支店はすごく大変だったと言っていたよ。」 貴志と成嶋はもともと、同じ支店に勤務していた。 その支店の1課長が成嶋で、2課長が貴志だったのだ。 貴志に先に転勤の辞令が出たため、先に支店を出ることとなったが、残された成嶋がそんな風に思っていたとは…。 「成嶋さんにそんな風に言って頂けるとは光栄ですね。」 「確かに。彼に言われるのは、お前も相当だな。僕も鼻が高い。しかもあそこで次長は出世らしいね。」 「どうでしょうか…」 「で、いいお話しかな?」 「ご存知ですか?」 「いや、ごくごく曖昧な噂。お前の口からきちんとした話が聞きたいかな。」 口当たりの良いワインと、見た目にも手の込んだ鮮やかな料理。 それを2人で摘む。     
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