10.人生は取捨選択

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「縁談です。」 「おめでとう。でお相手は?」 「小笠原真奈さんです。」 ふうん…と貴広は思案顔だ。 同じ経営者として、心当たりがあるのであろうと推察された。 「お前をお婿にやる気は僕はないんだが。」 「籍なんて、このご時世、どうでも良くないですか?」 「んー…。先方は乗り気だろう?」 「お話しは進んでいます。秋くらいに式を挙げたいと考えています。」 「お前に継がせたいのかな。」 「さあ?そんな話は聞いてないですよ。」 「選択肢が、あるな。人生の先輩として言うなら…どの道を選んでも、正直後悔はする。それを後悔なんてしてないもんという顔で進んで行くのが男だろう。」 「すごい、アドバイスですね。」 「お前にだから正直に言うんだよ。」 いつも兄はそうだった。的確な時期に的確なアドバイスをくれる。 貴志が銀行に入行するのを迷っていた時も。 家のことは、僕に任せればいい、お前はやりたいことをやりなさい、と言ってくれたのだ。 「いつも、そうなんですね。」 「人生は、取捨選択だ。お前だって、その歳まで一人だったのには相応の理由があるんだろ。」 そういうことだ、とワインを注がれた。     
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