10.人生は取捨選択

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「僕だって、後悔はしてない。それは本当だよ。でも、たまには他の道を辿ったかもしれない自分を思ったりはする。」 「それって、さっきの後悔してないもん、てやつですか?」 違うよ、と貴広に苦笑される。 「あの道を行っていたら、別の形があったかなというのは後悔ではないよ。」 「お嫁に行くわけじゃないですよ。」 「なんかさぁ、お前が家庭を持つかと思うと、おにーちゃんとしては感慨深い訳よ。」 「すごく複雑です。真奈のことは、とても大切にしたい。でもむちゃくちゃにしたいとも思うんです。可愛くて惹かれる。笑っていて欲しいけど、泣いていても、怒っていても愛しいです。上手く説明出来ないんですけど。」 ふふっと貴広に笑われた。 「お前、それはベタ惚れって言うんじゃないの?」 もう、どんな選択しても、応援する。と貴広に言われて、そうか、と思う。 どの道を選んでも後悔するなら、1番やりたいことを優先させるべきなんだな。 「このタイミングだから言うんだが、お前、もう戻ってこい。」 「え…。」 貴広は真顔だった。 「もう、いいだろう?銀行にいてどうするんだ?支店長にでもなるのか?それが何かなるか?」 うちに来てくれたら、もっとお前の手腕が発揮出来る場所があるだろ。 そう言われて…。 貴志はつい、兄の顔を見てしまう。     
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