10.人生は取捨選択

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淡々としていて、表情は全く読めなかった。 今日は自分の報告だけと思っていたので、貴広の言葉は本当に思ってもみなかったことだ。 「よく、考えます。」 「だな。」 その後は結婚式なんて半年後にしようと思ったら、もう探さないとダメだぞとかいろいろ言われた。 今度、真奈をちゃんと実家に連れてこいとか。 そうして食事を終えて、外で貴広と別れた。 車で送ると言われたが、貴志はそれを断る。少し寄りたいところがあったので。 貴志が寄ったのは、先日成嶋と一緒に行ったバーだ。 成嶋に電話したら、ちょうどお客様と別れたところで近くにいるから今から行くと言う。 飲みながら待ってると伝えた。 バーテンのお勧めをロックにしてもらって、ちびちび飲んでいると成嶋がやって来る。 「榊原が誘ってくれるなんて、珍しいな。」 嬉しそうだ。 オレも同じものちょうだい、と慣れた様子で頼んでいる。 「成嶋さんは、僕が銀行員じゃなくても仲間だって、言うんですか?」 「お前、酔ってる?」 「酔ってません。…多分。」 「言うよ。オレはお前の仕事内容を認めてるから。てか、どうしたんだ?」 「今日、兄に会ったんです。真奈の事を報告しようと思って。そしたら、お前は銀行にいて何かなるのかって言われました。」 「榊原の辛辣なところは、兄さん似なのか…」 「でも、その通りだと思ってしまったんです。今、次長とか言ってますけど、支店長になったから、どうだって言うんですか?」 成嶋は、ロックのそれを一気に煽った。 そして、榊原に向き直る。
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