3.成嶋部長、登場!

5/10
前へ
/154ページ
次へ
「そうでもねーぞ。見かけ程高くはない。お前、営業だろ?これくらいの店は知っておけよ。」 「はい…」 相変わらずだな、と榊原は笑みが漏れる。 成嶋は見込みのありそうな部下には、言葉を惜しまない。 確かに外観は敷居の高そうな会席風だが、店員は黒ベストに黒のロングエプロンで、レストランのようだ。 成嶋がドリンクのメニューに目を通している。 「会席ってより、創作料理に近い。だから、敷居はそんな高くないんだよ。」 それでも、個室を選択するところはさすがだと思う。 「泡もん…何度も頼むのめんどくせーな、スパークリングワインでいいか?」 それを泡もん、と言いますか…。 「で、どうだ?仕事は。」 スパーリングワインだが、成嶋の注ぎ方ではまるでビールのようだ。 成嶋の質問に榊原は答える。 「決裁が多いですね。」 「まあ、管理職だからな。少しは外出てんだろ?」 「いえ。ほとんど出てないですね。」 料理を摘みながら、話を始める。 うん。美味しいな。 料理は見た目にも洗練されていて、なかなかの店だ。 成嶋がきょとん、と顔を上げた。 「もったいねーな。」 「もったいない?ですか?」 「なあ、柳田はどう思ってんの?」 「あ、いい上司です。相談にもちゃんと乗ってくれますし、頂く回答もなるほどと納得出来ることばかりで。」     
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7480人が本棚に入れています
本棚に追加