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「そうでもねーぞ。見かけ程高くはない。お前、営業だろ?これくらいの店は知っておけよ。」
「はい…」
相変わらずだな、と榊原は笑みが漏れる。
成嶋は見込みのありそうな部下には、言葉を惜しまない。
確かに外観は敷居の高そうな会席風だが、店員は黒ベストに黒のロングエプロンで、レストランのようだ。
成嶋がドリンクのメニューに目を通している。
「会席ってより、創作料理に近い。だから、敷居はそんな高くないんだよ。」
それでも、個室を選択するところはさすがだと思う。
「泡もん…何度も頼むのめんどくせーな、スパークリングワインでいいか?」
それを泡もん、と言いますか…。
「で、どうだ?仕事は。」
スパーリングワインだが、成嶋の注ぎ方ではまるでビールのようだ。
成嶋の質問に榊原は答える。
「決裁が多いですね。」
「まあ、管理職だからな。少しは外出てんだろ?」
「いえ。ほとんど出てないですね。」
料理を摘みながら、話を始める。
うん。美味しいな。
料理は見た目にも洗練されていて、なかなかの店だ。
成嶋がきょとん、と顔を上げた。
「もったいねーな。」
「もったいない?ですか?」
「なあ、柳田はどう思ってんの?」
「あ、いい上司です。相談にもちゃんと乗ってくれますし、頂く回答もなるほどと納得出来ることばかりで。」
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