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「いひゃい、いひゃいいれす!榊原次長ー。」
無表情で、ほっぺたを引っ張ってやった。
「へーえ、小笠原さん?」
人事と噂話が好物なのは、銀行員にそれしか楽しみがないからだろうか。
変に噂になるのは好ましくないし、本意ではない。
ここだけの話みんな知ってる、ではシャレにならない。
「言わねーよ?」
「知ってます。」
ジロリと柳田を見遣る。
成嶋はにっと口元に笑みを浮かべた。
「柳田くーん、今この場でお話ししてることは、この場限りだよ。洩れたら、分かってるよね?」
柳田は笑顔の成嶋に震え上がっていた。
「い、言いません!洩らしません!」
「大した話じゃないです。結婚前提でお付き合いしてるんですよ。」
「へえ?」
成嶋の目が三日月のようになっていて、絶妙にイラッとするのはなぜだろうか。
「ひえぇ、そうだったんですかぁ。支店の女子がガッカリするなー。」
「柳田くーん?お口は閉じてろよ?洩れたら、成嶋先輩が体育館裏に呼び出すぞー。」
「は、はいぃ。」
まあ、成嶋がこれだけ脅しをかけたら、洩れることはないだろう。
「ホントにご馳走になってしまって、いいんですか?」
店の外に出たら、柳田がもじもじしている。
そう思うのも、無理はない店構えではあったが。
あははっと成嶋は笑い飛ばした。
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