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そう、声を掛けて来たのは支社の若手だ。
「分かりました。」
貴志が所属しているのは、個人を担当する支店になる。法人担当の支社は同じ支店にはあるものの、直属の上司も支店長、だ。
内心、支社長?と思ったものの、声にも顔にもそんな事は一切出さない。
すぐに返事をして、席を立った。
「失礼します。」
ノックをして、支社長室に入った。
中は応接セットもある、立派な個室だ。
「ああ、榊原次長、まあ、座って、座って。」
「はい。」
進められるまま、応接セットのソファに座る。
「君、結婚してなかったよね。」
「はい…」
なんだ、この風向きは…。
果てしなく嫌な予感しかしない。
「お付き合いしている人なんかは…?」
「今はいませんね。」
「いいお話しがあるんだけどね。」
いいお話しって何だ?!日本昔ばなしか?!
「取引先で、お断り出来なくて。会うだけでいいんだよ。私の顔を立てると思って、何とかお願いできないか!」
頼む!とまで、言われて頭を下げられては、断る訳にもいかない。
「今まで浮いた話ひとつなかったお嬢さんらしいんだ。お年は25だか6だかそんなもんらしい。お相手の家柄は間違いないし、私も君なら間違いないかと思って。
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