番外1:真奈ちゃんの初恋

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「いえ。余り頂けないんです。今日は…やめておきます。」 普段、人見知りする真奈は、相手と上手く話せなかったり、微妙に沈黙してしまったりすることもあるのだが、榊原相手には、そんな心配は必要なく、とても上手に話しを引き出してくれる。 そんなところも、大人で素敵だな、と思う。 「すごく綺麗なお着物ですね?」 「でも、この歳で振袖とか、嫌って言ったんですけど。」 「とても素敵です。お似合いですよ?」 「あ、りがとうございます…」 お世辞ではない、綺麗、という褒め言葉をこんなに嬉しく感じることはない。 「今、お勤めはされてるんですか?」 「はい。」 「どちらに?」 釣書がないもの。そうよね。 どうやら何も知らされていないらしい。 「えっと、銀行です。」 驚いた様子の榊原に、慌てて真奈は言った。 「あのっ、でも、榊原さんのところじゃないです。信託銀行なんです。そこで事務アシスタントをしています。」 「僕の勤め先のことはご存知なんですね。」 「はい。父から聞いて。」 こちらにはある程度情報があるのに、相手は全くこちらのことは知らされていないらしい。 「本当にごめんなさい。」 「真奈さん。」 「はい…」     
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