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「謝る必要はないんですよ。僕も充分理解して、来ていますから。それより、せっかくですから、お食事頂きませんか?」
「はい。」
確かにそうだ。せっかくなのだから、ご用意されたお食事はいただこう。
例え、このお見合いを断るにしても。
食事中も気詰まりにならないように、何くれとなく榊原がいろいろ話してくれた。
お仕事は忙しいんですか、と問われ、
「そうですね。でも、きっと榊原さん程ではないと思います。」
つい、淡々と答えてしまった。
「どうして?」
それを榊原にくすっと笑われる。
どうして。って…。
榊原は商業銀行の大きな支店の次長だ。
課長を束ねる立場にあると聞いている。
商業銀行は信託銀行とは比べ物にならないくらい、忙しいと聞いた。
「なんか、イメージなんですけど…」
「商銀は忙しそう?」
「あのっ、イメージです!」
図星を刺され、頬が赤くなるのが分かった。
またも、榊原にふふっと、微笑みかけられる。
この人、なんでこんなに妖艶なの?
「真奈さん、お食事の後、予定はありますか?」
「いえ…。」
「では、少しだけ散歩しませんか?ここの庭はガーデニングがとても綺麗なんです。」
そうして、真奈の好みの顔で笑まれてしまっては断ることなど出来ない。
今日だけは、いいでしょうか。
あと、少しだけ。
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