5.お噂はかねがね

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「ええ。結納前ではあるのは、充分承知しているんですけど。」 「真奈がいいのであれば、そこまでは問わないよ。」 「本日、真奈さんを連れ出す許可をお願いします。」 「まあ、子供ではないからね。私の許可はいらないだろう。」 「ありがとうございます。」 「当然だろうけど、君はそつがないね。」 「恐れ入ります。」 有益だったよ、と当主に握手を求められた。 「真奈がベタ惚れになる訳だね。」 「え…」 そつがない、はよく言われることなので、何とも思わないが、ベタ惚れ...?真奈、そんなこと報告してるのか?さすがに動揺すると、してやったりの顔にぶつかる。 「まあ、見る目はあろうよ。」 「光栄です…。」 当主の前を辞すると、パタパタっとスリッパの音がして、真奈が駆けてきた。 「貴志さんっ!」 「真奈。お父様の許可は頂いたよ。」 「それって…」 「うん。結婚のね。出掛けられる?」 「はい。」 真奈は上はブラウスだが、下はサブリナパンツで動きやすそうな服装をしていた。 普段のワンピースもいいと思うが、初めて見たパンツ姿も似合っている。 玄関まで行くと、真奈の母と先程のお手伝いの女性がいた。 「先日は、たいしたご挨拶も出来ず、失礼致しました。」 と真奈の母に頭を下げられた。 「こちらこそ。」 「よろしくお願い致します。」 「お預かり致します。」 貴志も頭を下げる。 「もう!お母様も、貴志さんもおやめ下さい。 では、行ってまいります。」 真奈はお手伝いの女性から、荷物を受け取った。 さらにそれを貴志が持つよ、と受け取る。 「ありがとうございます…。」 真奈のはにかんだ笑顔を見ると、貴志も安心できた。 「ホント、スマートねぇ…」 「お母様っ!」 母娘のやり取りは微笑ましい。 貴志はくすっと笑ってしまった。 「じゃあ、行こうか。」 「はいっ。」     
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