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「ええ。結納前ではあるのは、充分承知しているんですけど。」
「真奈がいいのであれば、そこまでは問わないよ。」
「本日、真奈さんを連れ出す許可をお願いします。」
「まあ、子供ではないからね。私の許可はいらないだろう。」
「ありがとうございます。」
「当然だろうけど、君はそつがないね。」
「恐れ入ります。」
有益だったよ、と当主に握手を求められた。
「真奈がベタ惚れになる訳だね。」
「え…」
そつがない、はよく言われることなので、何とも思わないが、ベタ惚れ...?真奈、そんなこと報告してるのか?さすがに動揺すると、してやったりの顔にぶつかる。
「まあ、見る目はあろうよ。」
「光栄です…。」
当主の前を辞すると、パタパタっとスリッパの音がして、真奈が駆けてきた。
「貴志さんっ!」
「真奈。お父様の許可は頂いたよ。」
「それって…」
「うん。結婚のね。出掛けられる?」
「はい。」
真奈は上はブラウスだが、下はサブリナパンツで動きやすそうな服装をしていた。
普段のワンピースもいいと思うが、初めて見たパンツ姿も似合っている。
玄関まで行くと、真奈の母と先程のお手伝いの女性がいた。
「先日は、たいしたご挨拶も出来ず、失礼致しました。」
と真奈の母に頭を下げられた。
「こちらこそ。」
「よろしくお願い致します。」
「お預かり致します。」
貴志も頭を下げる。
「もう!お母様も、貴志さんもおやめ下さい。
では、行ってまいります。」
真奈はお手伝いの女性から、荷物を受け取った。
さらにそれを貴志が持つよ、と受け取る。
「ありがとうございます…。」
真奈のはにかんだ笑顔を見ると、貴志も安心できた。
「ホント、スマートねぇ…」
「お母様っ!」
母娘のやり取りは微笑ましい。
貴志はくすっと笑ってしまった。
「じゃあ、行こうか。」
「はいっ。」
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