7479人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
成嶋に急に振られる。
資料ありの会議なんかより余程頭を回転させないと、ついていけないな、これは。
「現状あるところがどれくらいで回してる、とか見込み収益のデータがあれば、稟議はあげられそうだな。」
「榊原なら?」
「明確化されていれば、承認する。稟議次第かな。ただ、僕なら現場とか見てみたいな。」
少し、考え自分ならどう対応するか、考えてみる。
「榊原が噛んでくれんなら、客持ってってもいーよ。今の所、対応遅いし、レスポンス悪いから。あの、柳田?とかゆーのにやらせてもいいし。」
「柳田だけでは、不安だな。そもそも、法人担当ではないしな。」
「だから、お前がいるんでしょ。まあ、個人運用の範囲と言えなくもないぞ。法リ協働にしてもいいし。」
成嶋の言う、『法リ協働』とは、法人担当と個人顧客担当が同時に動くことだ。
総合提案として、評価されるため、評価が非常に高くなる。
まあ、それを抜きにしても、成嶋と組むのは面白そうだ。
「僕で良ければ。」
「すげー、助かる!内容悪くないはずなのに、今の担当者に話、全然通じなくて、正直、困ってたんだ!」
というか、成嶋のスピード感についてこれていないんだろうな、と思う。
いちいち上席に相談を上げているような担当者では、無理だろう。
「容赦ないね、お前…」
早瀬があきれたような表情をしていた。
「仕事ですからねぇ。あいつ、仕事はコウノトリか何かが運んで来ると思ってんじゃねーかな。」
ポツっと言う成嶋の言葉に、貴志は軽く笑いが漏れる。
玉石混交で入社してくるのが金融機関だ。人材が多様なのは認めるが。
「問題ないんですか?」
貴志としては、自分の支店の実績になるのも助かるし、部下にも勉強になるだろう。
しかし、銀行員の縄張り意識が強いことを貴志は理解している。
もちろん、成嶋も充分理解していることは、分かってはいるが。
最初のコメントを投稿しよう!