8.何もしてないはずはない。

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8.何もしてないはずはない。

「榊原次長、こんにちは!今日はお世話になります!」 そう言って、ペコリと頭をさげたのは、成嶋葵だ。 先日、葵の所属するエリアの支店長から、連絡があり、今度の相続セミナーをエリアでやりたいので、勉強のために葵を同席させて欲しい、とのことだった。 果たして、これは額面通りに受け取るべきか、成嶋へのおもねり、と受け取るべきか。 だが、葵は至極真面目な様子なので、一石二鳥と思われたんだな、と理解する。 葵は前から、ふんわりした見た目とその中にも、芯のしっかりしたところがあったが、結婚して、ますます、磨きがかかったように思う。 「成嶋さん、今日はよろしく。細かいことはうちの担当者から、説明させますね。」 「はい。」 知り合いではあるものの、それとこれとは別なので、そこは徹底させる榊原だ。 葵も当然のように対応してくる。 うん、さすが。 榊原は柳田を呼んだ。 「はいっ!」 先程から、葵をちらちらと見ていた柳田だ。 葵がにっこり笑いかけると、すっかり目を奪われていたが。 「柳田くん、こちらは成嶋葵さんです。今度、成嶋さんのエリアでもセミナーをやりたいそうで、勉強のために今日は研修に来られてます。案内をよろしくお願いします。」 「はいっ!」 張り切っているが、大丈夫か? 「よろしくお願いします。」 と頭を下げる葵に、かなり好印象を持ったようだ。 「柳田くん、先に言っておくけど、彼女は成嶋部長の奥様だから。」 「はっ、はい?!」 まあ、その気持ちは分かるがな。 すごい、マヌケ顔だ。 柳田はかわいいが、こいつ色々顔に出過ぎる。     
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