8.何もしてないはずはない。

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面白い…。疑問に思わないんだろうか。 同じ苗字だぞ。 「よろしくお願いします…。」 葵がそう、挨拶した後、すみません、私化粧室に失礼します、と席を外す。葵らしからぬ、雰囲気だ。 「え、マジ?ちょ、榊原、ここ頼むわ。」 慌てて、成嶋が葵の後を追いかけていった。 「何か、あったんでしょうか…」 「あったんだろうな。」 貴志もそうとしか、答えようがない。 「では、会場を見せて頂けますか?」 寺崎の声だ。 動揺は見られない。 この落ち着きを柳田にも分けてやりたい。 そして、寺崎くん、少しは動揺しないのか。 上司が同姓の女性を追いかけて出て行ってしまったんだが。 「柳田くん、案内してあげて。」 「はい。」 正反対の2人だ。子供を見守る親のような気持ちになってしまうのは、なぜだろうか。 20分程して、満足気な成嶋と顔を真っ赤にした葵が戻ってきて、榊原に頭を下げた。 「あの…お騒がせしました。」 「ごめんな、榊原。こいつ、何か誤解してたみたいで。」 「いや。」 榊原は指で眼鏡を直す。 「寺崎くんと、柳田に設営をお願いしてるところです。」 「ああ、寺崎なら大丈夫だよ。一通りの準備は出来ると思うがな。多分。」
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