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今回のセミナーは、いつも会議室として使っているところを、セミナー会場として使うので、さほど、準備はかからないはずだが、やはり、事前準備は必要だ。
成嶋もそれを見越して、万が一のために早めに来てくれたのだろう、と思う。
まあ、先程の20分は別として。
設営の準備の確認のために、みんなで会議室に移動する。
その際、成嶋がぼそぼそと、葵に聞こえないよう榊原に声をひそめてきた。
「先に言うけど、20分では無理だからな。」
「何のことでしょうか。」
「目が疑ってんだよ。」
「疑ってません。」
「オレはしたかったんだけど、葵が絶対ダメって。」
「それは、葵さんが正しいです。」
てか、他人の支店でナニしようとしたんだ?!
「あいつ、結構何でも我慢しちゃうんだな。知ってたけど。」
「ああ、そうですね。」
でも、成嶋自身はどこまで気付いていたか、分からないが、少なくとも同じ支店で働いていた時、葵は相当成嶋を頼りにしていたと思う。
今、東川がいるとはいえ、ひとりで仕事をしていくのは、寄る辺なく不安な気持ちもあるのではないだろうか。
確かに、そんな気持ちも葵は我慢してしまうタイプだ。
「不安なんじゃないですか?」
「うん。オレも察してやれなくて…。」
「でも、大丈夫だったんですよね。」
「まあ。理解が早いし、分かってくれてんだよなー、結局は。」
だから、たまに絶妙にイラッとさせられるのは、なぜなんだろうか。
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