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会社に帰ってきたころ、ふと、携帯を見たら炯からのラインが入っている。
『お客様との食事がキャンセルになったから、一緒にメシ行こう。』
葵はつい、微笑んでしまった。
結婚したとはいえ、炯は忙しい。
意外と休日も仕事絡みで動いていたりして、なかなか2人でゆっくり過ごす時間がないのだ。
特に、今の会社に移ってからは、更に忙しそうに見える。
平日もお客様との食事や仲間との食事で、ほとんど家では食べない。
もちろん予想はしていたが、たまにこのようなお誘いがあると、嬉しくなってしまう。
炯のリクエストは、最寄り駅の炉端焼きの店だった。
現地集合で、早い方が先に注文をしておく、が成嶋家の今のルールだ。
葵が店に入ると、顔馴染みとなった大将が、奥の席を用意してくれる。
2人きりだと、炯が静かな席を好むからだ。
おススメを聞きながら、注文していると、炯がやってきた。
「お疲れ。」
「お疲れ様でした。」
ひと息ついたところで、最近どうか?という話になる。
「あ、今度炯さんのセミナー、私、行く事になりました。」
「どういうことかな…?」
「なんか、うちのエリアでもやるらしいです。セミナー。」
「へぇ?」
他人事のようだ。
「で、取り回しのところを私に、と依頼がありまして。」
「無理すんなよ。」
「はい。」
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