2.立てば芍薬、座れば牡丹...

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でも、真奈はそんなことはなかった。 声も鈴を転がしたような、という表現があるがまさにそれだ。 もっと聞きたい、と思ってしまう。 「こういうところ、よく来られるんですか?」 「いえ、たまに、です。」 「どういうものがお好きなんですか?」 「割と何でも頂くんです。」 「好き嫌いないんですね。お仕事は忙しいですか?」 「そうですね。でも、きっと榊原さん程ではないと思います。」 「どうして?」 「なんか、イメージなんですけど…」 「商銀は忙しそう?」 「あのっ、イメージです!」 少し赤くなっている。可愛い。 ちょっとずつ解れてきているのか、やり取りがスムーズになってきたのも、面白い。 ふっと笑うと目を逸らされてしまった。 しかし、少しだけ見えている耳が赤いのは隠せない。 「真奈さん、お食事の後、予定はありますか?」 「いえ…。」 「では、少しだけ散歩しませんか?ここの庭はガーデニングがとても綺麗なんです。」 そう言って微笑みかけると、真奈ははい、と頷いた。 食事が済んだ後、着物では、立ちづらいだろうと、榊原は真奈の椅子を引いてやる。 「ありがとうございます。」 とは言われたが、また俯かれてしまった。     
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