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以前、この榊原に好意を持ってもらったこともあるが、葵にしてみれば、一時の気の迷いだったのだろうと思える。
先日、家に来た榊原の婚約者は、本当にお人形のように可愛らしくて、話してみると、育ちの良さが分かるようなお嬢様だった。
お似合いの2人だったな…。
「柳田くん。」
「はいっ!」
榊原が言うには、柳田が今回のセミナーの取り回しを担当していて、彼に詳しく聞いてくれ、ということだった。
柳田の話は聞いたことがある。
榊原の部下に使えそうなのがいる、とか言っていた。
そうか、この人か、と思う。
葵はにっこり笑いかけた。
「柳田くん、こちらは成嶋葵さんです。今度、成嶋さんのエリアでもセミナーをやりたいそうで、勉強のために今日は研修に来られてます。案内をよろしくお願いします。」
「はいっ!」
元気いいなあ。
物怖じしないところが炯のお気に入りポイントなのだろう。
「よろしくお願いします。」
と葵が頭を下げると、
「柳田くん、先に言っておくけど、彼女は成嶋部長の奥様だから。」
榊原の突然の宣言だ。
「はっ、はい?!」
突然で驚く、が、柳田はもっと驚いたようで、返事をした声が裏返っていた。
そんなに、驚かなくても…。
「あの、それ内緒でお願いします。」
口元に人差し指をあてて、目を笑ませる葵だ。
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