2.立てば芍薬、座れば牡丹...

6/7
前へ
/154ページ
次へ
「真奈さん、もし差し支えなければ腕をどうぞ。足元が歩きにくいでしょうから、よろしければ。」 拒否られるかと思ったが、すみません、とそっと手を預けてくる。 それでもかなり遠慮していて、ほとんど指先だけを引っ掛けている感じだ。 エレベーターでロビー階まで降り、そこから庭に向かう。 一瞬、ロビーがしん、とした。 美形と日本人形の組み合わせは半端なく、目立つ。 時折、美形の方が柔らかく、お人形のような彼女を見るのも絵のようだ。 お互い一人でも目立つのだが、それが二人並ぶとなかなかの見栄えなのだ。 「お散歩ですか?どうぞ。」 ドアマンがドアを開けてくれる。 「ありがとう。」 二人がいなくなると、やっとロビーは、いつものざわつきを取り戻した。 「本当。お庭もすごく素敵なんですね。」 「真奈さん。」 「はい。」 「僕は今回このお話、進めたいと思っています。あなたはいかがですか?」 「榊原さんさえ、よろしければ。」 「貴志、です。僕の名前。」 「貴志さん…。」 「はい。真奈…でいいかな?」 真奈はこくっと頷く。 「真奈は、僕のこと嫌い?」 「え!そんな訳ないです。」 「じゃ、どうして俯いちゃうの?」 「だって…、貴志さん、すごく、素敵だから。」 貴志の目がきらっと光ったのも、真奈は俯いて見ていない。 「真奈…こっち見て。」     
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7484人が本棚に入れています
本棚に追加