7484人が本棚に入れています
本棚に追加
「真奈さん、もし差し支えなければ腕をどうぞ。足元が歩きにくいでしょうから、よろしければ。」
拒否られるかと思ったが、すみません、とそっと手を預けてくる。
それでもかなり遠慮していて、ほとんど指先だけを引っ掛けている感じだ。
エレベーターでロビー階まで降り、そこから庭に向かう。
一瞬、ロビーがしん、とした。
美形と日本人形の組み合わせは半端なく、目立つ。
時折、美形の方が柔らかく、お人形のような彼女を見るのも絵のようだ。
お互い一人でも目立つのだが、それが二人並ぶとなかなかの見栄えなのだ。
「お散歩ですか?どうぞ。」
ドアマンがドアを開けてくれる。
「ありがとう。」
二人がいなくなると、やっとロビーは、いつものざわつきを取り戻した。
「本当。お庭もすごく素敵なんですね。」
「真奈さん。」
「はい。」
「僕は今回このお話、進めたいと思っています。あなたはいかがですか?」
「榊原さんさえ、よろしければ。」
「貴志、です。僕の名前。」
「貴志さん…。」
「はい。真奈…でいいかな?」
真奈はこくっと頷く。
「真奈は、僕のこと嫌い?」
「え!そんな訳ないです。」
「じゃ、どうして俯いちゃうの?」
「だって…、貴志さん、すごく、素敵だから。」
貴志の目がきらっと光ったのも、真奈は俯いて見ていない。
「真奈…こっち見て。」
最初のコメントを投稿しよう!