9.殺さないよ。ただ、死にたいと思うくらいの目に合わせるだけ

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9.殺さないよ。ただ、死にたいと思うくらいの目に合わせるだけ

「さすが成嶋さんだね。」 「はい。」 真奈がぼうっとしている。 「大丈夫?」 「はい…中にいてはなかなか、分からないですね。熱気があるんですね、現場って。」 「当てられたの?」 「少し…。貴志さんもこの、最先端の中でやってこられていたんですね。すごいです。尊敬します。」 セミナーは個別相談の質疑応答の時間に入っていて、支店の担当者も、信託の担当者もお客様に捕まって、相談に応じている。 結局、手伝いで来ていたはずの葵も捕まってしまったようだった。 「あ、榊原次長、すみません。」 奥の方で課員が手を上げている。 「はい。」 「先程の方がおっしゃっていた継承ね、あれいいと思うんだけど。」 お客様が成嶋から、直接詳細が聞けないのか、と言う。 「成嶋でご案内申し上げたのは一部の例なので、お客様にそれがいちばん適切かどうかは、内容をよくお伺いして判断させて頂いた方がよろしいかと思います。課員にて詳しくお伺いしたいのですが、後日お時間を頂けますか?」 「もちろんだよ。」 「大事なことですから、こちらもしっかり対応させて頂きますし、必要に応じて成嶋にもご紹介させて頂きますので。」 一旦いいと思うとどうしても先に進みたくなるのが人間というものだ。 だからといって、誰にでも同じことをすればいいとは貴志は思っていない。    
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