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じゃ、次のアポのお時間をお伺いして、と課員に指示を出す。
「前のめりにならないようにハンドリングを頼みます。」
「はい。」
課員が貴志に見とれていて。
貴志はふっと笑って、課員の肩をぽんぽん、とたたく。
「頼みましたよ。」
「あ!はいっ!」
全く、僕に見蕩れていてどうすんるだか…。
全体の様子を把握しようとして、周りを見回し、真奈の姿がないことに貴志が気づく。
ん?真奈…?
廊下か…?
ふと、廊下に出たところ、きゃ…という高い声。
廊下の突き当たりの踊り場で、真奈が誰かと揉み合いになっていた。
「おい!何してるんだ!」
貴志が駆け寄る。
男は慌てて、真奈から飛び退いた。
「何も。ただ話してただけですよ。」
真奈は泣いてはいないが、目元が赤い。
「あのっ…私は相談出来ないので、担当者をご紹介しますと言ったのですが、ご了解頂けなくて…」
「榊原次長!」
成嶋が状況に気付いて出てきたようだ。
「こっちで対応します。次長は小笠原さんを。」
貴志も気にはなったが、真奈が小刻みに震えて、怖がっている事を考えると彼女を放って置くことなど出来なかった。
背後からは成嶋の怒っている雰囲気をビリビリと感じるので、ここは任せても良いだろうと判断する。
今は真奈だ。
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