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都会の片隅に、場違いな木造建ての家が1軒建っている。
真夜中の2時過ぎ、木造建ての家主のスマホが鳴った。
1通のメールが来ていた。送り主は“黒い病棟”。
「やぁっとか、明日取りに行って貰わねぇとなぁ」
赤や黒の塗料に塗れた青年はメールを確認すると、維持の悪そうな顔で喉を鳴らすように笑った。
「あれは、どこだったか……」
青年は散らかった机の上から、1冊のノートを探し当てた。
『明日素材を取りに行け。イチゴも忘れるな』
青年はノートにそう書くと、シャワーを浴びてから眠った。
翌朝、青年は斜陽の眩しさで目を覚ました。
「うーん……、もう朝ぁ?ものすごく寝不足感……」
青年はあくびをしながら、両手を伸ばした。そこには昨夜の底意地の悪そうな面影はない。
「く~ぅ、効く~……あれ?」
青年は机の上にノートが広げてあるのを見つけた。
「はぁ、またか……。ま、いいけど……。それよりちゃんとお風呂に入ってほしいものだね」
青年はノートを見ると、ため息をついて呟いた。
「さてと、やるか」
青年は気合を入れるように自分の頬を叩くと、風呂を沸かした。
それから1番汚れが少ない服に着替えると、車に乗った。
車の中は塗料臭く、あちこちにペンキやら絵の具の汚れがくっついていた。
彼は塗料調色の仕事をしている。青年は自らを色彩屋と呼び、顧客らもまた、彼を色彩屋と呼んだ。
色彩屋は黒い病棟へ着くと、後部座席に置いてあった大きなカバンを持って、車から降りた。
黒い病棟に入ると、受付のナースに挨拶をした。
「やぁ、おはよう。奈々ちゃん」
色彩屋が挨拶をすると、ナースはげんなりとした顔で、色彩屋を見た。
「おはようございます……」
こうも冷たい対応をされると傷つくが、いつもの事だと自分に言い聞かせて気にしないようにする。
「先生は……きっと寝てるんだろうね。それじゃ、回収しちゃうから」
色彩屋は彼女の返事を待たずに、薬品室へ足を運んだ。
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