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真夜中11時、色彩屋は目を覚ました。
身体を起こすと、腹が重い。
「アイツ、また食いやがったな……」
色彩屋は舌打ちをすると、ゆっくりと立ち上がって外へ出た。
散歩は好きではないが、こうも身体が重いと何をするにしても困る。
「なんでオレが散歩なんか……」
色彩屋はブツブツと文句を言いながら、眠らない街を歩く。
小一時間も歩けば、身体の重さはだいぶマシになる。
色彩屋は家に帰ると、台所に立ってイチゴのヘタを取って2等分にする。
鍋にイチゴを敷き詰め、そこにガムシロと蜂蜜、そしてレモン汁を入れてグツグツと煮込む。
「ったく、クイーンはなんでこんなモンを好むのかねぇ?オレには理解できねぇや」
色彩屋は文句を言いながらも、焦げたり噴き出したりしないよう、よくかき混ぜながら煮詰めていく。
数十分煮詰めて、イチゴジャムの完成だ。
色彩屋はまだ熱いイチゴジャムをバットに流し込むと、冷凍庫からハードタイプの保冷剤をふたつ取り出した。
冷蔵庫の中に保冷剤を並べ、その上にイチゴジャムを置いて冷やしておく。
イチゴジャムを作り終えた色彩屋は、小さな冷蔵庫から保冷カバンを引っ張り出すと、細切れの内臓がある方のガラス瓶を手に取った。
そしてそのまま作業場に入る。
赤や黒、茶色などの塗料を取ると、慣れた手つきでそれらを混ぜ合わせていく。
出来たのは赤黒い、リアルな血液の色。
「これで仕上げだ」
色彩屋は出来たばかりの塗料に、あろう事か細切れになった内臓や血をすべて流し込んでかき混ぜた。
「リアルを取り込んでこそ、よりリアルを超越していく……」
色彩屋は誰に言うわけでもなく、静かに言うと、口角を上げて三日月を浮かべた。
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