夜の激闘は人知れず

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 宇宙人はこちらの襲撃を予測していたらしい。奇襲するつもりでいたがそうはいかず、彼らの情報収集力はあなどれない。となれば、ここは慎重に夜を待って夜襲をかけるのがいいだろう、と師茂丙兵衛は思った。  油断のならない相手だ、と気を引き締めた。  日が落ちて残照も夜に飲み込まれ、やがて深夜になる。だれもが寝静まると思しき時間……。  そのときを、一階の住人用(ひとんち)の庭先でじっと彫像のように動かず待っていた師茂丙兵衛は、スイッチが入ったかのようにさっと立ち上がると、ロープを伝って403号室へとまるでスパイダーマンのように音もなく壁を登って到達した。手すりを乗り越え、今度は首尾よく侵入に成功したかと思えた。ベランダからうかがう室内は暗く、宇宙人どもはすでに寝静まったかと思えた。  ところが──。
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