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あのひとの姿は、もうどこにも見えなくなった。
ただ目前には、闇。
夜の闇が不思議なオーラを発して、わたしを包む。
もうあのひとは消滅したのだろう。
わたしも、もうすぐ消滅してしまうだろう。
ふと、夜の闇のオーラが不思議なヴェールのように白く浮き上がった。
白いヴェールは、何故かわたしの方に向かってきた。
それが何なのか、わたしにはわからなかった。
ただヴェールは、わたしを優しく包み込むと、まるで、わたしの鎧のように、わたしの周辺を取り巻いた。
頭上を見上げた。
あまりにも強烈な光が、わたしに降り注がれていたから。
そこには満月がひとつ。
まるで光のシャワーのように、満月の放つ強烈な光は、わたしを力強く刺し抜いた。
わたしを取り巻く白いヴェールは、まるで月の強烈な光の強さを緩和し、わたしを愛撫するかのように、優しくわたしに巻きついた。
月の光の強度はさらに増す。
白いヴェールは、もうほとんどわたしと一体になり、優しい愛撫を繰り返す。
その愛撫の心地良さに、わたしは我を失った。
徐々に意識がなくなり、白いヴェールの優しい愛撫に、わたしは完全に身を任せた。
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