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意識が完全になくなる寸前、白いヴェールのむこうに、あのひとの顔が見えた。
わたしを送り出すような、あのひとの穏やかな顔が一瞬明滅し、そして消えていった。
白いヴェールに飲み込まれるように包まれ、意識が消えかかる瞬間に、今までに見たことがないほどの強烈な光が、頭上からさらに降り注がれた。
わたしは完全にその強烈な光に、身体中を、子宮から力強く貫かれた。
わたしは何かを叫んでいたが、その声は聞こえなかった。
わたしは白いヴェールに優しく包まれたまま、頭上からの強烈な光に身体の芯から、子宮から、完膚なきまでに貫かれた。
わたしの叫びはまるで聞こえないが、その音はきっと、強烈な光に飲み込まれたのだろう。
ふと、わたしは、自分の身体が光を放っているのを見た。
白いヴェールは、わたしが放つ光によって、すでに溶け出していた。
わたしは周囲が見えなくなるほどの光を放っていた。
わたしを優しく包んでいた白いヴェールは、その光を浴びて、跡形もなく消滅していった。
頭上にいたはずの月が、いつの間にか、かなり遠くに小さく見えた。
そしてそのうち、遠くに見える小さな月は、まるで流れ星のように夜空に消えていった。
わたしは、そこにいた。
真っ暗闇の夜の空に、わたしだけがそこにいた。
わたしは広大な夜の海を羽ばたいた。
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