『何の変哲もない一日』

4/6
前へ
/6ページ
次へ
「行くのか」 「ああ。食べたいならお前も来るんだ」  外は風が静かだった。鳥の丸焼きと付け合わせを籠に入れ、オルランドは戸締りをしほうきに乗って飛び立った。 「私は先に行っているからねー!」  そう叫んだあと、メルランの姿はすでになかった。彼は気にせずに病院へ向かって飛んだ。太陽は沈み始めていた。 「こんにちは、オルランドですが」  病院のオリヴィエの部屋の戸を四回ノックして、他人行儀にオルランドは言った。 「よく来たな、さあ入れ。先に師匠も来ている」  わずかなランプの明かりに照らされた部屋に、彼はほうきを抱えて入った。 「あの人にいきなり家に入ってくるなって言っといてくれ」 「言っても聞かん人だ。諦めろ。オーブンはどこだ」 「知らん、家内に聞いてくれ」 「この家に住んでいるとは思えない言い草だ」  彼はオリヴィエの妻にオーブンを借り、鶏を丸焼きにした。 「たいしたものね」 「独り身だと、なんでも一人でやるようになるんだ」 「確かに、そうね」  相変わらず仲が良いのか悪いのかわからない夫婦だと、オルランドはオーブンの中を覗き込みながら思った。 「何か手伝うことはないか」     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加